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# 福生市の仕事を見やすく、透明性の高いものに。:3つの提案 2026年10月20日 梶原 元 ## 自治体のすべての事業を評価する「事務事業評価」 **市役所が、自分の仕事を自分で採点する仕組みです。** 地方自治体の仕事は、「事業」という単位に分かれています(福生市の一般会計は約420事業)。事務事業評価は、その事業ひとつひとつについて、「いくらかかったか」「目標を達成したか」「続けるべきか、見直すべきか」を毎年点検する仕組みです。民間企業の「事業の見直し」にあたります。 ### 歩み:資料室の綴りから、市民が読める資料へ - **始まりは1990年代後半。** 三重県が1996年に全事業を採点する仕組みを導入し、全国に広がりました。市町村に法律上の義務はなく、やるかどうかも、やり方も市ごとにばらばらです(導入しているのは市区の83.5%、町村の38.9%。総務省・平成28年調査)。 - **広まったあと、すぐに「形だけ」になりました。**評価調書(事務事業評価の結果)は毎年作られるが、市役所の資料室に置いておかれるだけで、読む人がいない。職員の側には「評価疲れ」という言葉が生まれ、導入後にやめた自治体が85あります。評価結果を予算要求に「原則反映」する自治体は25%にとどまります。 - **いま、状況が変わりつつあります。** 評価調書をインターネットで公開する自治体が増え(導入自治体の73%)、市民が容易に事業評価を読み、予算書や決算書と突き合わせられるようになりました。ただし、公開されていても対象が一部だったり結果の欄がなかったりすれば、点検はできません。外部の目を入れている自治体も約半数です。 ### 評価調書を読めば、採点とは別に「この事業は必要か」を考えられる 評価調書の価値は、採点だけではありません。 事業ごとに「何をしているか」「何にいくら使ったか」「何人が利用したか」「職員の人件費を含めた本当の費用」が書いてあり、市民の目で「この事業は必要か」を考える材料になります。福生市の令和6年度の評価調書からは、たとえば次のようなことが読み取れます。 | 事業 | 年間の費用 | 利用の実績 | 利用1件あたり | | --- | --- | --- | --- | | 休日歯科診療 | 333万円 | 受診54人 | 約6.2万円 | | 高齢者デジタルデバイド対策(スマホ体験) | 785万円 | 参加51人 | 約15万円 | | 表彰事務(式典) | 305万円 | 来場114人 | 約2.7万円 | | 市民契約保養施設 | 70万円 | 利用172人(目標330人) | 約4,100円 → 市が廃止を決定 | これらを一律に「いらない」と言いたいのではありません。休日の歯科のように、利用が少なくても備えとして必要なものはあります。大事なのは、「その備えに年333万円を払うか」を市民が自分で考えられる材料が、すでに公開されていることです。実際、市民契約保養施設は評価を経て廃止が決まりました。読んで声をあげる市民が増えれば、こうした見直しも増えます。 ## 割高で、増え続ける福生市の行政コスト **福生市の行政は、市民一人あたりで見ると割高です。** 人口約5.7万人の小さな市でも、市役所・議会・消防・ごみ処理は一式必要です。その費用を少ない人数で分け合うので、一人あたりの負担は大きな市より重くなります。令和5年度の決算で比べると、市民一人あたりの歳出は福生市が約55万円、多摩26市の平均が約44万円。一方で、一人あたりの市税は福生市が約15万円、平均が約18万円。使うお金は多く、自分で集めるお金は少ない。差額は国と都からのお金で埋めています。 **そして、歳出は増え続けています。** 平成27年度から令和6年度までの10年で、人口は5.9万人から5.7万人に減りましたが、市民一人あたりの歳出は約40万円から約54万円へと約3割増えています(貯金口座の統合による一時的な増額を除く)。同じ期間の物価上昇は約1割。中身を見ると、職員数は342人から385人に増えて人件費は一人あたり約2割増、委託費などの物件費は約6割増。ただしこの間、一人あたりの市税は約5%しか増えていません。歳出の伸びを支えているのは、市民の税ではなく、国と都からのお金です。 国と都に支えられたお金で、割高な行政支出を増やし続けている。今後さらに人口減少が進むなかで、「この事業は本当に必要か」「この費用は妥当か」を事業ごとに点検する仕組みが、きちんと動いているか。それが事務事業評価に注目する理由です。 ## 福生市の運用を調べて分かったこと 事務事業評価は「あるかどうか」ではなく「どう運用しているか」で価値が決まる仕組みです。では、福生市はどうでしょうか。令和3年度から7年度までの5年分を、市が公開している予算書・決算書と突き合わせて調べました。分かったのは、この仕組みが「届いていなく」「分かりにくく」「効いていない」ことです。 | いまの問題 | 提案 | | --- | --- | | ① 評価が届いていない | すべての事業を2年に1度評価する | | ② 評価が分かりにくい | 対象の選び方と評価の結果を、毎年すべて公開する | | ③ 評価が効いていない | 見直しが実際に起きる採点に改める | ## ① 評価が届いていない → すべての事業を2年に1度評価する **いまの状態** - **5年間一度も評価されていない事業が75ある**。「法定・義務」「財務」に分類された事業で、貯金への積立を除いても約100億円。市の事業費(積立と人件費を除いて約250億円)の約4割にあたる。 - **その中には、市の判断で金額が決まる支出もある**。国民健康保険への「法定外」の繰入れ(6.8億円)は、法律で決まった額ではなく市が決めた額。国保に入っていない市民の税金も使うお金だが、一度も評価されていない。 - **法律で必要な事業でも、「やり方」と「費用」は点検できる**。生活保護や児童手当の給付額は国が決めるが、事務の進め方や委託の費用は市の工夫で変わる。 **評価できる点**:法定・財務を除いた事業は、2年のうちに約9割が評価されている。仕組みは動いている。届いていないのは、最初から対象外にした部分。 **市に求めること** 1. 法定の事業も含め、すべての事業を2年に1度は評価する。 2. 繰出金や負担金のように「市の判断で額が決まる部分」がある支出は、その部分の根拠を毎年説明する。 ## ② 評価が分かりにくい → 対象の選び方と結果をすべて公開する **いまの状態** - **どの事業が評価されていて、どの事業がされていないかが、一目で分からない**。毎年公開されるのは「その年に評価した事業」の一覧だけ。市は事業を2つに分けて1年おきに評価しているが、その説明は評価の資料になく、評価しなかった事業の一覧もない。「2年で約9割の事業が評価されている」「5年間一度も評価されない事業が75ある」ということは、令和3年度から7年度の一覧をすべて集め、予算書の全事業と突き合わせて初めて分かる。普通の市民には、そこまで見えない。 - **評価を引き上げた理由が、確かめられない**。令和7年度は、担当課の採点で改善が必要(B)とされた44事業のうち25事業が、企画部門の見直し(二次評価)で継続(A)に戻された。戻す理由は「臨時的経費の影響のため」など一句だけで、臨時の分がいくらだったのかは書かれていない。市民は、その判断が妥当かを確かめられない。 - **公金の行き先が、評価とつながっていない**。公共施設の運営を任せる指定管理(年6.1億円)や団体への補助金(少なくとも約3億円)は、受け取る団体の名前や選定の結果が、市のホームページに施設ごと・制度ごとの別の資料として出ている。指定管理には「モニタリング評価」も別にあり、令和6年度は全施設がA(良好)だが、そこに指定管理料の金額は書かれていない。予算書・決算書・評価調書には団体名が出てこない。つまり「この事業のこの金額が、どの団体に、何年続いて渡っていて、どう評価されたか」を一枚で見ることができない。 **評価できる点**:福生市は、職員の人件費や施設の減価償却まで含めた「事業ごとの本当の費用」を、予算と決算で全事業分公開している。指定管理者の選定結果も施設ごとに公開している。これは多くの自治体より進んでいる。足りないのは、それらを評価とつなげて、一目で見られるようにすること。 **市に求めること** 1. 全事業の一覧に、最新の評価結果(年度・一次・二次)を載せる。その年に評価しなかった事業は前回の結果を、一度も評価していない事業は「評価なし」と記載し、市民が1枚で全事業の状況を見られるようにする。 2. 一次→二次で評価が変わった事業は、変更前後の点数と理由を、金額を含めて具体的に公開する。 3. 評価調書に、指定管理者・補助金を受ける団体の名前・金額・選び方・継続年数を載せる。少なくとも、市がすでに公開している選定結果の資料を調書からたどれるようにする。 ## ③ 評価が効いていない → 見直しが実際に起きる採点に改める **いまの状態** - **5年間、「縮小」「廃止」の判定はゼロ。「改善が必要」も後から消えている**。廃止が決まったのは、年約70万円の事業1件だけ。令和7年度は、担当課の採点で改善が必要(B)だった44事業のうち25事業が二次評価で継続(A)に戻され、最終的に154事業中135がA、Bは19事業。Bの割合は令和3年度の48%から7年度の12%へと減り続けている。 - **そもそも「縮小」が出ない採点になっている**。評価した154事業の約7割は、費用の点数が最低でも縮小判定にならない。成果の目標を持たない事業(154事業中93)には「目標達成」と同じ点数が自動的に付く。二次評価には点数を下げるルールもあるが、5年間で実際に使われたのは上げる補正だけ。 - **目標に届かない事業が半分以上**。令和6年度、目標値のある事業の54%が未達。それでも評価はほとんどが「継続」。 - **指標が成果を測っていない**。不登校対策の指標は「支援員の配置時間」、学力向上は「補助員の配置時間」。不登校の数や学力の変化は測っていない。 - **市自身の方針と合っていない**。市の予算編成方針は、各課に「必要性の薄れた事業は積極的に縮小・廃止すること」と求めている。評価の仕組みは、それを5年間一度も後押ししていない。 **評価できる点**:市民契約保養施設の事業は、評価を経て市が自ら廃止を決めた。評価が働けば、見直しは起きる。 **市に求めること** 1. 成果の目標を持たない事業を、自動的に高い点数にしない。市民に届いた成果で測る目標を置く。 2. 評価の見直しは、上げる方向だけでなく下げる方向にも行う。すでにある「下げるルール」を実際に使い、使った件数を公開する。 3. 市がすでに公開している「事業ごとの本当の費用」を1人・1件あたりに直し、市内の同じ種類の施設や近隣の市と比べる項目を加える。 4. 目標に2年続けて届かない事業は、縮小・廃止を含めて必ず検討し、結論と理由を公開する。 5. 無作為に選んだ市民が、公開の場で事業を点検する仕組みを設ける。団体の代表ではなくくじで選んだ個人とし、任期を決めて入れ替える。市がその判定に従わないときは、理由を公開する。 6. 市議会は、決算の審査で事務事業評価を使い、毎年いくつかの事業を選んで公開の場で質疑し、意見を市長に出す。市はその対応を翌年の予算審査で報告する。 上記の提案は資料の作り方と評価のやり方を変えればできることで、新しい予算はほとんど要りません。市民による点検の場を設けるにしても、かかるのは謝礼と事務の費用程度です。一方で、点検の対象になるのは年300億円を超える歳出です。見直しが実際に起きるようになれば、そこで浮いたお金をどう使うかを、市民が決められるようになります。 ## この資料について - 数字はすべて福生市と東京都の公開資料から取っています。令和6年度の予算書・予算説明書・補正予算(第1〜7号)・決算説明書、令和7年度の予算説明書、令和3〜7年度の行政評価対象事業一覧と評価調書、「行政評価の評価方法」、指定管理者の選定結果、決算カード(平成27〜令和6年度)、東京都「市町村決算状況調」(令和5年度)です。 - 全国の状況は、総務省「地方公共団体における行政評価の取組状況等に関する調査結果」(平成28年10月1日現在)によります。国の包括的な調査としてはこれが最新で、その後の変化は反映されていません。 ### 出典(URL一覧) **福生市・行政評価** - [行政評価(市公式ページ。令和3〜7年度の事務事業評価実施結果一覧・評価調書・評価方法)](https://www.city.fussa.tokyo.jp/municipal/management/reform/1003477.html) - [令和7年度 事務事業評価調書(PDF。154事業、清掃事務は29ページ、税務事務は150ページ)](https://www.city.fussa.tokyo.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/003/477/r7tyousyo.pdf) - [令和7年度 事務事業評価実施結果一覧(PDF)](https://www.city.fussa.tokyo.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/003/477/r7itiran_v2.pdf.pdf) - [令和6年度 事務事業評価実施結果一覧(PDF。評価結果の欄がない年度)](https://www.city.fussa.tokyo.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/003/477/r6itirann.pdf) - [令和5年度 実施結果一覧(PDF)](https://www.city.fussa.tokyo.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/003/477/jimujigyouitiran005.pdf) ・ [令和4年度(PDF)](https://www.city.fussa.tokyo.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/003/477/jimujigyouitiran004.pdf) ・ [令和3年度(PDF)](https://www.city.fussa.tokyo.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/003/477/jimujigyouitiran3.pdf) - [評価方法及び評価項目(PDF。「3 二次評価の方法」に点数を上げる・下げるルール)](https://www.city.fussa.tokyo.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/003/477/hyoukahouhou.pdf) **福生市・予算・決算** - [令和6年度当初予算(予算書・予算説明書)](https://www.city.fussa.tokyo.jp/municipal/aboutfussa/finances/yosan/1018811.html) - [令和6年度補正予算(第1〜7号)](https://www.city.fussa.tokyo.jp/municipal/aboutfussa/finances/yosan/1019163.html) - [令和6年度決算(決算書・決算説明書。事業ごとの費用・利用実績・課長総括)](https://www.city.fussa.tokyo.jp/municipal/aboutfussa/finances/kessan/1020596.html) - [令和7年度当初予算](https://www.city.fussa.tokyo.jp/municipal/aboutfussa/finances/yosan/1019846.html) - [決算カード(平成27〜令和6年度)](https://www.city.fussa.tokyo.jp/municipal/aboutfussa/finances/kessan/1003187.html) - [福生市財政状況資料集](https://www.city.fussa.tokyo.jp/municipal/aboutfussa/finances/kessan/1003186.html) - [決算(年度別一覧)](https://www.city.fussa.tokyo.jp/municipal/aboutfussa/finances/kessan/index.html) **福生市・指定管理者** - [指定管理者制度(選定結果・モニタリング)](https://www.city.fussa.tokyo.jp/municipal/outline/designated/index.html) - [令和5年度 指定管理者候補者の選定結果](https://www.city.fussa.tokyo.jp/municipal/outline/designated/1018066.html) ・ [令和4年度](https://www.city.fussa.tokyo.jp/municipal/outline/designated/1007330.html) - [指定管理者導入施設モニタリング(平成24〜令和7年度)](https://www.city.fussa.tokyo.jp/municipal/outline/designated/1003552.html) **東京都・国** - [令和5年度 東京都市町村普通会計決算の概要(東京都総務局。市民一人あたり歳出・市税の26市比較)](https://www.metro.tokyo.lg.jp/information/press/2024/09/2024090407) - [東京都総務局 市町村決算状況調(市・資料)](https://www.soumu.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/soumu/01kessanbon-shi) - [総務省 地方公共団体における行政評価の取組状況(平成28年10月1日現在、平成29年6月公表)](https://www.soumu.go.jp/iken/02gyosei04_04000062.html) ## 市外の方へ 本ページとチラシの内容は、自分の自治体用に自由にアレンジしてご活用ください。 文章・図表・漫画を含め、改変・再利用・再配布は自由です。出典表示も不要です。 **作り方**:お住まいの市の「行政評価」ページから、事務事業評価の一覧・評価調書・評価方法のPDFを数年分集めます。それをAI(Claudeなど)に渡し、本ページを見せて「この構成で○○市版を作って」と頼めば、たたき台ができます。 **注意**:数字と出典はすべて福生市のものです。必ずご自身の市の資料に差し替えてください。評価の採点ルール(点数の付け方・判定の区分)は自治体ごとに違います。 ## チラシPDF A4-chirashi-fussa-r6.pdf